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ステンドグラスの修復では、何をしているのか|解体から組み直しまで

先に寿命が来るのはガラスではなくケイムです。記録・解体・洗浄・差し替え・組み直しという工房の作業を順に説明します。どこまで元に戻すかという判断についても書きました。

「これは、もう駄目でしょうか」——傷んだステンドグラスの写真とともに、そうご相談をいただくことがあります。

たいていの場合、直せます。ステンドグラスは、解体して組み直すことを前提に作られているためです。家具や陶器の修理とは、そこが違います。

では実際に何をしているのか。工房の作業を順にご説明いたします。

先に寿命が来るのは、ガラスではありません

前提として、これを知っていただくと話が早くなります。

ステンドグラスは、ガラス片をケイム(鉛のリード線)でつなぎ、交点を半田で固定し、隙間にパテを詰めて作られています。このうち先に寿命を迎えるのは、ガラスではなくケイムのほうです。

鉛はやわらかい金属です。何十年も自重を支え続けるうちに、少しずつ伸びます。パテも乾いて痩せていきます。するとガラスとケイムの間に隙間ができ、面全体がたわみはじめます。

ガラスそのものは、割れていなければ100年経っても健在です。ですから修復とは、元のガラスを活かしたまま、支えている骨組みを新しくする作業だとお考えください。

工房でしていること

一.記録をとる

解体する前に、必ず記録を残します。写真を撮り、ガラスの位置と番号を図に写しとる。解体してしまえば、元の並びは分からなくなります。ここを省くと復元できません。

二.解体する

半田の交点を外し、ケイムを開いて、ガラスを一枚ずつ取り出します。ここが最も神経を使う工程です。すでにひびが入っているガラスは、力を加えた瞬間に割れます。

古いパテは硬化して固まっていますので、ガラスを傷めないよう少しずつ取り除きます。時間はかかりますが、急いで良いことは何もありません。

三.洗う

取り出したガラスを洗浄します。この段階で、色が戻ります。何十年分の汚れとパテの油分が落ちると、くすんで見えていたガラスが本来の色を取り戻します。

絵付けが施されたガラスは、洗い方を変えます。絵付けは表面の層ですので、こすれば消えてしまいます。

四.割れたガラスを差し替える

割れているものだけを新しいガラスに替えます。ここで問題になるのが、同じガラスが手に入らないことです。

手吹きのガラスは一枚ずつ違いますし、100年前のものはいま製造されていません。ですので手持ちのガラスから、最も近い表情のものを探します。厚み、色の濃さ、気泡の入り方。周囲との釣り合いで判断します。

ガラスの性質についてはアンティークガラスとは何かにまとめております。

五.組み直す

新しいケイムで、記録どおりに組み直します。ケイムは原則としてすべて交換します。一部だけ替えても、古い部分がまた伸びるためです。

交点を半田で固定し、隙間にパテを詰めて、余分を拭き取る。乾いたら磨いて仕上げます。ここまで来れば、また100年もつ状態になります。

どこまで戻すか、という判断

修復には、考え方の分かれるところがあります。作られた当時の姿に戻すのか、経てきた時間も含めて残すのかです。

たとえばケイムの黒ずみ。これは鉛の表面が酸化したもので、傷みではありません。むしろこの黒ずみが色ガラスの輪郭を引き締めています。新品同様に光らせることが、良い結果とは限りません。

過去に別の職人が手を入れた跡も同じです。当時としては最善の判断だったはずのものを、消してよいのか。私どもは、そのステンドグラスがどう使われてきたかを含めて、どこまで戻すかをご相談のうえ決めております。

建具に入ったままの場合

ドアや窓に組み込まれているものは、まず取り外します。押縁を外して、パネルだけを工房へ持ち帰ります。建具そのものは、その場に残ります。

取り外したあとの開口は、仮のガラスやパネルで塞ぎます。修復のあいだ、そこが開いたままになることはございません。

お預かりする期間は、状態と大きさによって変わります。現物を拝見したうえでお伝えします。

直したほうがよい症状

次の状態が出ていれば、早めにご相談ください。放っておくと進みます。

面が波打っている。ケイムがゆるみ、自重でたわんでいます。放置するとガラスが動き、いずれ割れます。

ガラスがカタカタ動く。ケイムとガラスの間に隙間ができています。振動のある建具では、そこから割れが始まります。

ひび、欠け。広がる前であれば、一枚の差し替えで済みます。

日々のお手入れで避けていただきたいことはステンドグラスのお手入れ|してはいけない三つのことにまとめております。

まずは、二枚の写真を

全体が入る写真と、気になる箇所に寄った写真を各一枚。修復が必要な状態か、様子を見てよい状態かをご返答いたします。

当スタジオで制作したものに限らず、承っております。ご自宅の建具に組み込まれたもの、譲り受けたアンティークのパネル、店舗や施設で長く使われてきたもの。制作元がどこであっても、状態を拝見したうえでご相談に応じます。

修復の考え方はステンドグラスの修理・修復にまとめております。まずはご相談・お見積もりより、お気軽にお声がけください。

FAQ

よくあるご質問

相談前に図面は必要ですか?

図面がある場合は、建具寸法、平面図、立面図をご共有ください。図面が未確定の場合でも、参考写真や設置予定場所の寸法をもとに初期相談が可能です。

アトリエの見学は予約が必要ですか?

いいえ、完全予約制ではございません。定休日以外は営業しております。

ただ、現場や打ち合わせで留守にしていることがございます。ご来店の前にご一報いただけると確実です。お電話でもメールでも構いません。

アトリエでは、制作中のもの、ガラスの在庫、英国ヴィクトリア時代のアンティークの実物をご覧いただけます。

寺社仏閣の案件も相談できますか?

可能です。空間の歴史性や光の入り方を踏まえ、慎重に計画します。

Case Studies

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