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店舗にステンドグラスを入れるとき|光の入らない場所をどうするか

外光が入らないテナントでは、ステンドグラスの背後に光源を仕込みます。洋食店の入り口に納めた実例をもとに、業種を伝える図案の考え方、アンティークの枠の流用、視線の調整までまとめました。

店舗のステンドグラスは、住宅とは条件が違います。

いちばん大きいのは、外光が入るとは限らないことです。商業ビルのテナント、地下、通路に面した区画。窓がない、あるいは窓があっても隣の建物しか見えない。住宅の設計手法がそのままでは使えません。

もうひとつ、店舗には住宅にない役割があります。そこが何の店かを、通りかかった人に伝えることです。

光がないなら、作ればよい

ある洋食店の入り口に、ステンドグラスを制作して設置いたしました。建物内のテナントで、外光がまったく入らない場所です。写真は京都府 洋食店エントランスのステンドグラスでご覧いただけます。

この場合の答えははっきりしています。ステンドグラスの背後に、LEDを仕込みました。

ステンドグラスは、光を反射して見るものではありません。光が通り抜けるときに色が生まれます。ですから、外光がなければ人工の光源を用意すればよい。原理としては単純です。

ただし、実際には設計が要ります。光源が近すぎると粒が透けて見え、面が均一になりません。遠すぎれば厚みが出て納まらない。ガラスの厚みと色の濃さに合わせて、光源との距離と拡散のさせ方を決めます。ここを外すと、せっかくのガラスが看板のように平板に見えてしまいます。

照明を組み込む利点もあります。時間帯に左右されません。住宅のステンドグラスは日照とともに表情が変わりますが、店舗ではむしろ、開店から閉店まで同じ状態で見えることが求められます。営業時間中ずっと、設計したとおりの色が出ます。

何の店かを、言葉を使わずに伝える

この洋食店の名物は、オムライスでした。

そこで図案は、フライパンと卵をモチーフにしました。文字は入れておりません。それでも、前を通った人には何の店か伝わります。

店舗のステンドグラスで最も考えるのが、この点です。看板ではなく、意匠として成立させながら、業種と個性を伝える。説明的になりすぎると安っぽくなり、抽象に寄りすぎると何も伝わりません。その間を探します。

手がかりは、たいていお店のなかにあります。名物の料理、創業の由来、店名の意味、扱っている品物。ご相談の際、私どもがお店のことを細かくうかがうのはそのためです。意匠は、そこから引き出すものだと考えております。

アンティークの枠を、流用する

この洋食店では、図案全体をアンティークな雰囲気でまとめました。そして枠にも、アンティークのステンドグラスに用いられていたものを流用しています。

これは、当スタジオならではの方法です。私どもはアンティークのステンドグラスを扱っておりますので、ガラスだけでなく、それを支えていた枠も手元にあります。長く使われてきた木には、新材では出せない色と艶があります。

新しく作った一枚に、古い枠を合わせる。これによって、設置した初日から、そこに何十年もあったような佇まいになります。店舗の場合、この「時間の厚み」が空気をつくります。開店したばかりの店には、なかなか出せないものです。

ただし、流用できる枠は手元にあるものに限られます。寸法も決まっています。ですので枠ありきで進める場合は、開口の寸法をそちらに合わせるという逆の設計になります。ご相談の早い段階でお話しいたします。

アンティークの扱いについては英国ヴィクトリア時代のアンティークドアを、日本の住宅に納めるにも書いております。

一枚だけでは、効かないことがあります

この洋食店では、ステンドグラスの制作・設置だけでなく、エントランスまわりの改装もあわせて承りました。

もとの入り口は、濃い緑の壁面に食品サンプルのショーケースが置かれた構成でした。飲食店として不足のない入り口です。ただ、そこに一枚だけステンドグラスを掛けても、周囲の強さに負けて、ただの飾りに見えてしまいます。

そこで、壁を白く、枠まわりを無垢材に替え、足元にオリーブを置きました。色数を減らし、素材の質感で構成し直したということです。背景が静かになったぶん、ステンドグラスの色だけが浮かび上がります。

このときの改装範囲は、入口左側の壁、入口の枠、ステンドグラスと背面のLED、店内の照明、店内のディスプレイです。入口から見えた奥の明るさが、そのまま入りやすさになりますので、店内側もあわせて調整しております。

これは店舗に限った話ではありません。住宅でも、まわりの内装と合っていなければ、ステンドグラスは効きません。ただ店舗の場合は、入り口そのものが集客の装置ですので、ここを一体で考える意味が大きくなります。

ステンドグラスだけをご依頼いただくこともできますし、まわりを含めてご相談いただくこともできます。「この一枚を、どうすれば一番きれいに見せられるか」という観点でご提案いたします。

視線を切りながら、気配は通す

飲食店で多いご相談が、これです。

入り口から店内が丸見えだと、お客様が落ち着きません。かといって完全に隠すと、入りにくい店になります。外から様子がまったく分からない飲食店に、初めての人は入りづらいものです。

ステンドグラスは、ここが得意です。視線は通さないが、光と人の気配は通す。色ガラスと透過性の高いガラスの配置で、どこまで見せてどこを隠すかを調整できます。座っている人の顔の高さだけ濃くする、といった設計もできます。

間仕切りとして使う方法もあります。客席と客席の間、レジ前と待合の間。壁を建てると圧迫感が出るところに、光を通す面を立てる。くわしくはステンドグラスパネルをご覧ください。

テナントの場合、確認すること

ビル内のテナントでは、住宅にはない確認事項があります。

原状回復の範囲。退去時にどこまで戻す必要があるかを、契約書でご確認ください。パネルとして設置すれば、取り外して持ち出せます。

電源の位置。照明を組み込む場合、背面に電源が必要です。配線をどこから引くかは、早い段階で内装業者様と調整いたします。

搬入経路。共用部分を通りますので、エレベーターの内寸と通路の曲がりを確認します。大きい場合は分割して搬入し、現地で組みます。

施工の日程は、営業への影響が最小になるようご相談のうえ調整いたします。

まずは、お店のことを聞かせてください

設置したい場所の写真と一緒に、何のお店か、名物は何か、どんなお客様に来ていただきたいかをお聞かせください。図案は、そこから起こします。

内装設計の段階からのご相談も承っております。開口の寸法や電源の位置を先に決められると、納まりの選択肢が広がります。設計者の方向けの情報は設計事務所の方へにまとめております。

費用の内訳は価格に、実際の納まりは施工事例にまとめております。まずはご相談・お見積もりより、お気軽にお声がけください。

FAQ

よくあるご質問

相談前に図面は必要ですか?

図面がある場合は、建具寸法、平面図、立面図をご共有ください。図面が未確定の場合でも、参考写真や設置予定場所の寸法をもとに初期相談が可能です。

アトリエの見学は予約が必要ですか?

いいえ、完全予約制ではございません。定休日以外は営業しております。

ただ、現場や打ち合わせで留守にしていることがございます。ご来店の前にご一報いただけると確実です。お電話でもメールでも構いません。

アトリエでは、制作中のもの、ガラスの在庫、英国ヴィクトリア時代のアンティークの実物をご覧いただけます。

寺社仏閣の案件も相談できますか?

可能です。空間の歴史性や光の入り方を踏まえ、慎重に計画します。

Case Studies

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